ボランティア講座
介護保険の導入とともに増加した高齢者向け入居施設。取材を重ねると施設側から「ボランティアに入ってもらいたいのだけど、どうしたらいいの?」という声を耳にします。施設のスタッフは人数配置されているものの、身体機能が衰えた高齢者相手ではどこも「手が足りない」。コストや求人難などの問題もありスタッフ増員は厳しいなか、ちょっと手伝ってくれる人、守ってくれる人がほしい、というのが本音のようです。
一方で「高齢者施設にボランティアで行ってみたいけど、どうしたら良いかわからない」というボランティア希望者からの声も聞きます。もともと中が見えなくて入りにくい福祉施設に、どうやってボランティア希望の旨を伝えたらよいのかわからない。何か役に立ちたいけど、いきなり身体介護を含む手伝いは不安だ、というところのようです。
こんな施設とボランティアとのマッチングに力を入れる鎌倉静養館でボランティア講座があるというので伺ってきました。鎌倉静養館はキリスト教精神に基づく社会福祉法人で、2つの入居型施設を中心に地域包括支援、居宅介護支援、デイサービス、ホームヘルプ、小規模多機能など様々な介護サービスを提供するなかで、幼稚園児から大人まで、個人から学校やグループなどのボランティアを年間2500人程度受け入れています。
鎌倉静養館にはボランティアの担当スタッフがいます。ボランティア活動のコーディネートと支援全般に対応します。ボランティアの問い合わせがあればこの担当者が内容や日時などの調整ののち、車いすの扱い方や認知症ご利用者への接し方等のオリエンテーションを行い、ボランティア希望者がスタッフとともに実地の活動に入れるようコーディネートするのです。この際、初心者がイメージする身体介護などのお手伝いは主流ではありません。1)散歩の同伴や傾聴ボランティアなど、職員とともに入居者に寄り添いをするボランティア、2)書道やカラオケなどクラブ活動の講師、3)お掃除や洗濯物たたみなど生活環境を整えるなどの活動が主なのだそうです。慣れないで高齢者の身体に直接触れる介護を行えば事故の元となり得るため、身体介護は慣れた職員が行い、それ以外の言わば「見守り、声かけ、環境整備」の部分をボランティアにお願いすることが多いのですって。なるほど、これなら経験のない人や学生の研修でも活動できそうです。由比ガ浜公園や稲村ケ崎の施設付近で高齢者と寄り添って歩く学生とスタッフの姿を時として見かけます。また施設内ではさまざまなサークルが活動しており、ボランティア講師の皆さんや入居者同士の交流さかんなのだそうで、ボランティアの定期的なかかわり
やその効果がうかがえます。
こうしたボランティアに長期にかかわっている人たち向けに開かれるのが「ボランティア講座」。介護のスキルアップを目的としています。この日は施設長を講師に「高齢者の移動や移乗介護の介護実技」。ボランティアが直接かかわることが少ない移動や移乗の身体介護実技ですが、そうしたプロの技術を理解した上で活動してもらいたい、家庭の介護でも生かしてもらいたいという施設側の思いを感じます。講座の終盤には理事長も参加し、施設側とボランティアが交流する貴重な場になっていました。
この施設ではボランティアを受け入れるためにコーディネートや研修といった準備やサポートを充実させています。「直接的な身体介護以外の役割」を「手が足りないからボランティアさんに頼む」というスタンスではなく、「寄り添いや見守りなど、ある役割を任せるからこそボランティアは施設に欠かせない存在」という認識で常時受け入れる体制をとっているようです。入居者の気持ちや施設の長期的な運営からみても、これからの施設はボランティア受け入れは必要だと思われます。見守りや声かけの準備から始まり、時間をかけてボランティア活動を受け入れ、育ててほしいと感じます。一方で、より多くの人が楽しみながらボランティア活動にかかわれるしくみの構築も大切です。施設側にはボランティアに興味のある人向けの介護講座開催や施設自身の見える化(見学や交流会など)、スムースに受け入れるためのコーディネーターの設置といった受け入れ態勢の充実など、学校や企業等の「社会」にはボランティア活動を単位や研修として取り入れるシステム化など、双方がボランティアを「たいせつな役割」と認めて推進に取り組むことが求められるようです。
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