交流の場

ボランティア講座

1s3a4530_2介護保険の導入とともに増加した高齢者向け入居施設。取材を重ねると施設側から「ボランティアに入ってもらいたいのだけど、どうしたらいいの?」という声を耳にします。施設のスタッフは人数配置されているものの、身体機能が衰えた高齢者相手ではどこも「手が足りない」。コストや求人難などの問題もありスタッフ増員は厳しいなか、ちょっと手伝ってくれる人、守ってくれる人がほしい、というのが本音のようです。

一方で「高齢者施設にボランティアで行ってみたいけど、どうしたら良いかわからない」というボランティア希望者からの声も聞きます。もともと中が見えなくて入りにくい福祉施設に、どうやってボランティア希望の旨を伝えたらよいのかわからない。何か役に立ちたいけど、いきなり身体介護を含む手伝いは不安だ、というところのようです。
こんな施設とボランティアとのマッチングに力を入れる鎌倉静養館でボランティア講座があるというので伺ってきました。鎌倉静養館はキリスト教精神に基づく社会福祉法人で、2つの入居型施設を中心に地域包括支援、居宅介護支援、デイサービス、ホームヘルプ、小規模多機能など様々な介護サービスを提供するなかで、幼稚園児から大人まで、個人から学校やグループなどのボランティアを年間2500人程度受け入れています。

鎌倉静養館にはボランティアの担当スタッフがいます。ボランティア活動のコーディネートと支援全般に対応します。ボランティアの問い合わせがあればこの担当者が内容や日時などの調整ののち、車いすの扱い方や認知症ご利用者への接し方等のオリエンテーションを行い、ボランティア希望者がスタッフとともに実地の活動に入れるようコーディネートするのです。この際、初心者がイメージする身体介護などのお手伝いは主流ではありません。1)散歩の同伴や傾聴ボランティアなど、職員とともに入居者に寄り添いをするボランティア、2)書道やカラオケなどクラブ活動の講師、3)お掃除や洗濯物たたみなど生活環境を整えるなどの活動が主なのだそうです。慣れないで高齢者の身体に直接触れる介護を行えば事故の元となり得るため、身体介護は慣れた職員が行い、それ以外の言わば「見守り、声かけ、環境整備」の部分をボランティアにお願いすることが多いのですって。なるほど、これなら経験のない人や学生の研修でも活動できそうです。由比ガ浜公園や稲村ケ崎の施設付近で高齢者と寄り添って歩く学生とスタッフの姿を時として見かけます。また施設内ではさまざまなサークルが活動しており、ボランティア講師の皆さんや入居者同士の交流さかんなのだそうで、ボランティアの定期的なかかわり

やその効果がうかがえます。
こうしたボランティアに長期にかかわっている人たち向けに開かれるのが「ボランティア講座」。介護のスキルアップを目的としています。この日は施設長を講師に「高齢者の移動や移乗介護の介護実技」。ボランティアが直接かかわることが少ない移動や移乗の身体介護実技ですが、そうしたプロの技術を理解した上で活動してもらいたい、家庭の介護でも生かしてもらいたいという施設側の思いを感じます。講座の終盤には理事長も参加し、施設側とボランティアが交流する貴重な場になっていました。

1s3a4533この施設ではボランティアを受け入れるためにコーディネートや研修といった準備やサポートを充実させています。「直接的な身体介護以外の役割」を「手が足りないからボランティアさんに頼む」というスタンスではなく、「寄り添いや見守りなど、ある役割を任せるからこそボランティアは施設に欠かせない存在」という認識で常時受け入れる体制をとっているようです。入居者の気持ちや施設の長期的な運営からみても、これからの施設はボランティア受け入れは必要だと思われます。見守りや声かけの準備から始まり、時間をかけてボランティア活動を受け入れ、育ててほしいと感じます。一方で、より多くの人が楽しみながらボランティア活動にかかわれるしくみの構築も大切です。施設側にはボランティアに興味のある人向けの介護講座開催や施設自身の見える化(見学や交流会など)、スムースに受け入れるためのコーディネーターの設置といった受け入れ態勢の充実など、学校や企業等の「社会」にはボランティア活動を単位や研修として取り入れるシステム化など、双方がボランティアを「たいせつな役割」と認めて推進に取り組むことが求められるようです。

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わたしの介護?!(鎌倉介護ガイドの交流イベント)

※3/11の地震災害のため延期しておりました「わたしの介護?!」は、6/4、5日に開催させていただきます。

被災されました皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。わたしたちは被災地の復興を祈り、できる支援をさせていただきつつ、 地域のきずなをいっそう大切にしていきたいと願っています。

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高齢者世帯が増えるなか、一人が要介護状態になると、
残った家族にはどんなことが起こり、どんな選択を迫られるのでしょうか?
脳卒中の後、医療ニーズの高い介護を長期間経験しながら
前向きに暮らす家族のケースを題材に、
一緒に考えていきましょう。

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日時6月4日(土)、5日(日) 11:00~16:00
(ワークショップは下記参照)
●場所カフェギャラリー ジャックと豆の木
      鎌倉市由比ガ浜2-4-39  0467-24-6202
●参加:無料
●内容:事例をもとに介護を考える

 展示 取材にもとづく写真やイラスト、図などでわかりやすく紹介します。(終日)
     わたしの介護の物語(家族の介護の関連資料)
         家族はどんな介護や介助をするのかな?
        介護の様子や介護サービス、鎌倉の施設紹介
     地域での交流の場づくりの取り組み紹介
     医療介護と家庭の連携を支援する情報システム・MYSSIのデモ
 

 ◆ワークショップ1  6月4日(土) 13:00~
 「住民同士の交流の場をつくろう
 ~高齢者2人暮らし世帯での医療ニーズの高い介護を経験した家族や地域の視点から」Imagek600
  話題提供: 宮地一美(アロマセラピスト、患者家族)
                   大澤恵子(看護師・ケアマネジャー)  
         樋川芳夫(神奈川県高齢福祉課長) 
  ファシリテーター:入江麻理子(NPOコソガイ・鎌倉介護ガイド)

 
 ◆ワークショップ2  6月5日(日) 13:00~
   「医療や介護が必要になる前に知っておきたい
   医療や介護、福祉にできること、要介護者/家族にできること 
~3/12の事例をもとに 」Img_9752
    話題提供: 福島廣子(ふれあいの泉総施設長)  
           清田光子(東海大学付属大磯病院 看護部)
           樋川芳夫(神奈川県高齢福祉課長)
ファシリテーター:内山映子(MYSSIプロジェクト、慶應義塾大学特任准教授)

鎌倉介護ガイド主催、MYSSIプロジェクトとの協働企画。今まで取材したり、かかわりのあった介護家族や施設、医療、介護事業などを地域とのつながりという視点から紹介・展示します。介護の現場はたいへんですが「生きる温かさ」や「人とつながること」の大切さを教えてくれます。アロマの香りとおいしいコーヒーとともに、介護のこと、家族のことや地域について、ご一緒にお話し、これからもつながりのある地域をつくっていけましたら幸いです

昨年の様子の記事はこちら

連絡先:0467-24-6202(ジャックと豆の木)
主催:NPOコソガイ(鎌倉介護ガイド)/共催:MYSSI(ミッシー)プロジェクト
平成22年ともしび推進運動助成事業

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幸寿苑の納涼祭

Entrance 雨続きの今夏では珍しくスカッと晴れた8/8(土)の夕方から、鎌倉関谷地域にある老健 鎌倉幸寿苑の納涼祭にうかがいました。

老健は医療施設。地域への一般開放には制度的に限度があるのだそうで、納涼祭は年に一度の機会とのこと。この日のためにスタッフは3ヶ月間準備をして、入居者はもとより家族や地域の方をお呼びします。エントランスを入るとロビー階ではいくつかの地域の方たちが手作りのお菓子やパン、アクセサリーや小物を販売しています。会議室はフリーマーケット場に変わりました。

Img_7595 メイン会場の屋上テラスでは地域から借りてきたという提灯に明かりがつき、特設ステージでは子どもたちのお囃子も披露されます。焼き鳥やおでん、焼きそばの模擬店は大繁盛。施設職員のほかに民生員さんたちも売り子さんとして手伝っています。子ども神輿が屋上を練り歩いた後、いよいよ日も落ちてフラダンスが始まりました。なぜか男性も女性と同じフラの衣装で踊りますが、何カ月も前から特訓を重ねたかいあって、とても華やかでユーモラス。参加者の笑顔を誘っていました。Hula

この納涼祭は年々参加者が増え、今では500人以上が訪れるとうかがいました。納涼祭と学校の体験授業受け入れが、幸寿苑での地域との接点なのだとか。準備の丁寧さとスタッフのホスピタリティーから地域への思いが伝わります。一方、お手伝いをする地域の皆さんからも「支えていこう」という気持ちが感じられました。

多くの施設が、開設時は地域とのコミュニケーションをどうとっていくかで苦労があると聞きます。9年間で相互に理解を重ねた幸寿苑の納涼祭は「そんな苦労」の解決方法の一つを示しているようにも感じられました。

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こどもと高齢者のアートセラピー

Img_5431_2  老人ホームの入居者さんが子どもたちと一緒に交流する時間があるとうかがって訪ねました。藤沢にある有料老人ホーム・サンフォーレ鵠沼の明るいダイニングで入居の高齢者さん15名が、いまかいまかと子どもたちを待っています。そこに幼児教室スコーレに通う2~6歳の元気いっぱいの子どもたち17名がやってきました。子どもたちはごあいさつした後、入居者の間に入ってさっそく手遊び歌をひろうします。「アンパンマンの歌」「ひげじいさん」「糸をまき」など、高齢者にはやや新し目の曲ですが、躊躇することなく自然な流れで手遊びに参加し、子どもたちにも入居者にも笑顔がこぼれます。Img_5450

いよいよ工作の時間。今日のテーマは「丸」。アートセラピーを担当する篠原さんがいろんな丸いものを出し、「丸」渡しゲームの始まりです。ボール、丸こんにゃく、ゆで卵。でも篠原さんは「もの」の名前を教えません。シニアさんからこどもへ子どもからシニアさんへ次々に「丸いもの」を渡しあって行きます。ものの正体を感覚を頼りに「なんだろう?」と推理もします。丸いものがみんなの手から手へ一周し終わって戻ってくると、ようやくタネ明かし。正体がわかると、な~るほど、とうなずく参加者もいます。

Img_54643_2  そんなゲームが終わると、今度は色とりどりに着色した卵の殻が渡されました。これを割って、両面テープがついた黒く丸い台紙に張り付けていくのです。ボランティアのスタッフが見守る中、子どもたちは熱中し、高齢者がちょっと手助けすると、台紙は見る間に殻で色鮮やかになっていきます。

黒丸台紙を集めてさらに大きな台紙にはると・・・大きな花咲く樹になりました!
「うわあ・・・」子どもたちと入居者から歓声が上がりました。バラバラに作った黒丸台紙がひとつの大きな絵になったのです。子どもImg_5481 がその樹に名前をつけて工作は終了です。子どもたちはさらにお遊戯を披露し高齢者にタッチして「またくるね」と帰って行きました。

今回のアートセラピーは丸をテーマに、触ること、渡しあうこと、作ること、興味を持って形を見ることでお互いを刺激しました。参加者は「次はなんだろう」というワクワク期待して、次第に豊かな表情を見せてくれます。見守っていた施設のスタッフが教えてくれました。「シニアさんは子どもたちから生きる元気をもらうみたいです。子どもが来るとちょっと疲れるけれど、とても楽しい、とおっしゃるんですよ。生活のほとんどに介助が入る状態のシニアさんたちが、子ども達に会うことで、自分が世話をしImg_5492 てあげたいという気持ちに自然なるのは素晴らしいことです。私たちも普段より気を使いますが、1ヶ月に一度の子どもたちとの出会いの時間が大好きなんです。」
幼児教室の先生もおっしゃいます。「こどもたちは最初シニアさんたちの顔が同じに見えると言っていましたが、今はみんな違うんだとわかっています。次はシニアさんにこんなことしてあげようよ、こんな歌なら喜ぶよ、と自分たちで話すほど高齢者のことを考え、一緒の時間を楽しみにしているんです。」

子どもたちと高齢者が交流し、あったかくって豊かな時間を共有しているようでした。

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紅茶ボランティア(特養鎌倉静養館)

Aono 毎月1回、由比が浜にある特養鎌倉静養館で紅茶ボランティアが開かれています。もともと皆さんに紅茶の美味しさを楽しんでもらいたいと、1年前から子育てママで紅茶インストラクターの青野さんが入居者さんに、選びに選んだ紅茶をふるまったのが始まり。それなら私たちもとお仲間のママ達が手伝い始め、どなたかが子どもを連れて来たのが好評だったことから、いつの頃からか入居者さんと子連れのママとのおいしい紅茶をはさんで共に過ごす「まったりした時間」になりました。

Kito 3月のこの日は2歳になるひろくんとしょうこちゃんがママ達と一緒にやってきました。約20名の入居の皆さんが入れ替わり立ち替わり施設の用意してくれたケーキで青野さんの入れてくれた香り高い紅茶をママたちといただきます。

ふだん静かに過ごす入居の皆さんには子どもたちの休みなく動く元気や人みしりの思うように行かない様子も、いつもとちがう刺激なのでしょう。「かわいいね」「けがさせないでね」「げんきだね、いくつ?」そんな声と慈しむような目線が子どもたちにそそがれます。子どもから目を離せなくって仲間としか話す機会がないママたちも、今日はたくさんの見守りがあって安心してくつろいだ気分のようです。Akushu

たわいないおしゃべりとおいしいお茶のティータイム。高齢者子育てママ双方に心地よい紅茶ボランティアは特養鎌倉静養館では今回限りの定期開催となりました。でも子育てママと高齢者は紅茶の後も立ち去りがたいようで、「また会おうね」そんな香りを残しながらおひらきとなりました。来年度は不定期ながらも再開の機会が設けられるようです。

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老人福祉センター 玉縄すこやかセンター

Outlook 仲間を見つけ、趣味を楽しむことは健康を保つ方法の一つです。隣近所、公園や自治会館など交流の場は様々ですが、高齢者を対象に健康を保ついこいの場・文化教養活動の場として市内には老人福祉センターが設置されています。名越に「やすらぎセンター」、笛田に「教養センター」、今泉に「さわやかセンター」、玉縄に「すこやかセンター」と腰越にある「老人いこいの家こゆるぎ荘」がそれで、現在は社会福祉法人鎌倉市社会福祉協議会が運営しています。どのセンターも市内在住60歳以上の方対象で費用は無料ですが、実際は70歳代からの利用が多いようです。今回は5施設のうちの1つ、玉縄すこやかセンターを訪問しました。Gateball

玉縄すこやかセンターはJR大船駅西口から清泉女学院行きバスで3分、玉縄台の閑静な住宅街にあります。入口に立つとまず目を引くのが立派な藤棚。その下にはベンチがあるので天気の好い日は外での会話も弾みます。裏手にはゲートボール場やグラウンドがあり、とても広々としています。建物の中は、いろいろな行事で使う大広間やサークル活動のための部屋、畳のちょっとした図書コーナーにゆったりソファーの交流スペースなどがあります。斜面を利用した建物のため段差はありますが、開放感のある吹き抜けと明るい日差しが気持ちいい。お風呂にはマッサージ機器なども設Hiroma_2 置され心身共にリフレッシュが可能です。立ち寄って一服するもよし、約30あるサークル 活動や講座などに参加するもよし、お風呂でゆったり気分に浸るのも自由です。また月4回の健康相談や福祉の相談も実施されているので、相談窓口としても気軽に利用できます。

現在、玉縄すこやかセンターでは1日約100人の利用があります。一般の人が利用できる駐車場がなく、バリアフリーの建物でもないため自立した高齢者がほとんどです。スタッFuro フの方は、利用者自身で支えあえる関係がこの場から生まれてくれたら嬉しいとおっしゃっていましたが、センターを見学するとそんな思いが随所から窺えます。浴室の洗面所にはちょっとした長椅子が置かれています。お風呂は気分が開放されるくつろぎの場であり、裸のつきあいから話が弾む「出会いの場」という配慮からです。また、交流スペースの机には布巾が置いてあり、『机が濡れたらこの布巾を使って下さい』というメッセージがついています。何もない机よりずっと温かく思えます。スタッフが黒子になってちょっと工夫することで血の通った場になるのだと感じました。そんなところが功を奏してか、気の合う同士が病気の時などは助け合っていると言う話もききました。Passage_2

老人福祉センターがお年寄りのためだけでなく、近隣の人が年齢に関係なく気軽に立ち寄れるようになると、さらに利用者も施設もイキイキして、元気な地域の拠点ができると感じました。

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【施設分類】老人福祉センター
【施設情報】
住所:神奈川県鎌倉市玉縄5-9-1
電話・FAX番号:0467-47-1338
URL:http://www.kamakura-shakyo.jp/p06_tamanawa.html
アクセス:JR大船駅西口5番乗り場、神奈中バス「清泉女学院」行き「玉縄台」バス停    徒歩1分
駐車場:なし
利用時間:午前9時から午後4時(お風呂は午前10時30分から午後3時30分)
開設:昭和58年
施設内容:大広間、教養娯楽室、図書コーナー、交流スペース、事務室、相談室、ゲートボール場、グラウンド
【費用】無料
【運営母体】社会福祉法人鎌倉市社会福祉協議会

※以上、取材による(データは平成20年9月現在のもの)

○市内各老人福祉センターの情報はこちら↓
http://www.kamakura-shakyo.jp/p06.html

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